判断の技術

あの決断は「正しかったか」で採点しない——決め方を見返す、月に一度の定点チェック

結果の良し悪しではなく、決めた時点の根拠と降りる条件を月に一度見返し、判断の質を育てる記事。

GIANt
公開
2026.08.02
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判断の技術
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半年前に下した決断を、いまのあなたはどう採点しているだろうか?

うまくいった決断は「正しかった」、思うようにいかなかった決断は「間違いだった」——たぶん、多くの人はそう振り返っている。

でも、その採点のしかたには落とし穴がある。

結果だけを見て決断の良し悪しを決めると、たまたま運が良かった雑な判断が「成功例」として記憶に残り、丁寧に考えた判断が「失敗」として切り捨てられていく。次に同じ場面が来たとき、あなたは雑なほうを再現してしまう。

決めたことを見返す習慣そのものは、悪くない。あるチーム運営の指南では、意思決定のログを残し、四半期ごとに見直すことが勧められている。要は、決めっぱなしにしないという話だ。ただ、見返すときに何を見るか——確かに、ここで差がつく。

「良い決断」とは、良い結果のことではない

賭けの思考では、決断の質と結果の質を切り分けている。結果がまだ確定していない状況で、手元の情報をどう並べ、どの条件を満たしたら進む・引くと決めたか。そこまでが「決め方」だ。

結果は、決め方に運が掛け算されて出てくる。だから、良い決め方でも負けることはあるし、雑な決め方でも勝つことはある。つまり、振り返りで採点すべきは結果ではなく、決めた瞬間の「決め方」のほうだ。勝ったか負けたかは、そのあとの話でいい。

7か国・25年の経営現場で、いちばん効いた振り返り

様々な場所で数えきれない判断をしてきた。撤退した事業もあれば、粘って立て直せた事業もある。振り返って思うのは、結果で一喜一憂していた時期の学びは驚くほど浅かった、ということだ。

成長に効いたのは、自分でわかるようにだけでも、判断をした時点で「何を根拠に、どこまで賭けるつもりなのか、どうなったら降りると決めたか」を一行でも残しておくのを徹底していた時だった。

あとで見返すと、結果が良かった案件でも「根拠が薄いまま突っ込んでいたなぁ」と感じるものが少なからず混じっていたりした。逆に、うまくいかなかった案件で「決め方は妥当だったが、読めない外部要因が動いた」幸運だったなと感じたものもある。結果は変わらない、でもこの二つを分けられるようになってから、次の判断の精度に変化があったと思う。

月に一度、決断を見返す三つの問い

大がかりな仕組みはいらない。決めたことをいくつか思い出し、次の三つだけを自分に問う。月に一度で十分だ。

一 決めた時の根拠は、いま見ても妥当か。 結果ではなく、あの時点で手元にあった材料だけで判断する。妥当なら、負けていても良い決断だ。

二 降りる条件を、決める前に決めていたか。 撤退ラインを先に引いていたか。引いていなかったなら、勝っていても要注意——次は運がないかもしれない。

三 同じ場面がまた来たら、同じ決め方をするか。 イエスなら再現していい型だ。ノーなら、どこを直すかを一行で残す。

この三つは、結果の当たり外れをいったん脇へどける問いになっている。だから、勝った決断からも負けた決断からも、同じだけ学べる。

明日からの一歩

次に何かを決めるとき、決めた理由と「降りる条件」をメモに一行だけ残してほしい。それだけで、来月のあなたは自分を採点する材料を持てる。

決断は、下した瞬間に終わりではない。結果が出たあとにもう一度、決め方のほうを見返す。この定点チェックを続けられる人が、長い目で見て引き返せる範囲で選び続けられる——勝ち続けるとは、たぶんそういうことだ。


出典:

GIANt

海外25年・複数国の経営現場から、組織の判断を点検する立場で、意思決定と確率思考について書いています。銘柄推奨や投資勧誘は行いません。週に一度、ニュースレターを配信中。

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